私たちの考え方
「選ばれる学校づくり」を
実現するために
大学は、研究や教育を通して日本を発展させていく原動力として期待されている存在です。しかし今、日本の大学は新たな問題に直面しています。少子化や学校数の増加、学部学科の多様化、あるいは入試方式の多様化。学生にとって大学の選択肢は無数に増えました。これまでのような偏差値や難易度中心の「大学選び」では、学生と大学のマッチングがうまくいかなくなってきています。
この状況が、学生の中途退学の増加や、学生募集への過度な資源集中といった問題を引き起こしているのではないでしょうか。こうした現状に対し、私たちは「学校づくり」のあり方を問い直すことが、大学が現在抱える問題を改善する糸口になると考えています。
「学校の価値」を正しく伝えることで学生が集まる学校づくり―「選ばれる学校づくり」は、「学費の値下げ」など安易なプロモーションにばかり頼るのではなく、「募集(広報)」と「教育」が一体となり、自校の「価値」をしっかり把握・共有したうえで、学生に正しく伝えていくことこそが重要だという信念に基づいています。
自校の「価値」を落としかねないプロモーションの弊害。
どの大学も元々、それぞれ異なる性質や特徴を持っていますが、大学を選ぶ側の高校生も、一人ひとりが個性や特徴をもっています。それゆえ、大学が持つ個性や特徴といったものが、どの高校生等にとっても「良い」ものであるとか、「悪い」ものであると一概にいうことはできません。
しかし、ここで重要なことは、高校生は彼らなりに、大学が持つ様々な性質を知った上で、その大学に進学することは自分にとってどのくらい「価値」が高いかを評価しているという点です。何に「価値」を感じるかは一人ひとり異なりますが、彼らはそれぞれに「価値」があると感じた大学に入学を決めているのです。それは、私たちが長年行ってきた調査・研究からも証明されています。こうした大学を評価する際のメカニズムを意識しないで、ただ学費の値下げや設備投資を行ったり、個別の細かい情報を脈絡なく伝えたりしたとしても、自校の「価値」は彼らには伝わらないことが多いのです。「価値」を感じるようにならないどころか、むしろ大学の「価値」を損ねる場合もあります。
社会心理学で科学的に「学校の価値」を
測定する。
それでは、「学校の価値」とは、いったい何でしょうか。「就職率がいい」「有名な先生がいる」「設備が充実している」……「学校の価値」を構成する要素は多岐に亘ります。一般的な方法では、様々な要素で成り立っている学校の総合的価値を、正しく数値化したり評価することはできません。しかし「学校の価値」を客観的かつ公正に測定することができれば、「選ばれる学校づくり」への道のりがはっきりと見えてくるのです。
私たちは社会心理学に基づいた研究から得た独自の知見をベースに、教育機関の調査を行ってきました。社会心理学とは、科学的に社会における人の心理・行動を研究する学問です。私たちは、進学活動者がどのような情報に影響され、どのような要素を重視して進路を決定していくのかを、約20年間調査・研究してきました。その中で蓄積されたデータに基づいて「学校選択意思決定モデル」として理論化しました。このモデルは、私たちが独自に開発した指標によって「進学活動者が考える学校の価値」を客観的・具体的に「測定」できる仕組みになっています。
「学校選択意志決定モデル」に基づいた調査によって、学生から見た自校の「価値」をしっかりと測定し、学校関係者皆が把握・共有する。そうすればその学校の伸ばすべき長所、取り組むべき課題が自ずと見えてきます。
「うまく見せる」学校から「正しく伝える」学校へ。
先生方や職員の方が気づいていなくても、ほとんどの学校には特徴や長所が存在します。私たちのこれまでの活動と多くの成功例がそう教えてくれています。
各学校が自校の特徴や長所をしっかりと把握し、わかりやすく発信する。そうすればその「価値」を感じて入学する学生が増えてきます。そうした学生は入学後も意欲が高いので、授業の質が向上したり、学校全体の活気も高まったり、退学しにくかったりと、中長期的に見て、学校全体の「価値」をさらに高めていけるという好循環が生まれます。
学生たちにとっては、学生生活における満足度の高まりや、学習意欲の向上などの効果が期待できます。さらに、将来の目的とのミスマッチが無い「学校選び」は中途退学や早期離職等の社会問題の軽減にも寄与するでしょう。